ぎっくり腰

ぎっくり腰とは一体どのような腰痛なのでしょうか？
ぎっくり腰の概要や発症原因についてみていきましょう。

●ぎっくり腰とは

ぎっくり腰の正式名称は「急性腰痛症」です。
正式名称のとおり急性に発生する腰痛を指します。
腰まわりの筋肉や靭帯が炎症を起こし、痛みが生じます。
突然激しい痛みを覚えて「びっくり」することが訛り、「ぎっくり」になったといわれています。

●原因

ぎっくり腰が生じる原因は明確にされていませんが、次のようなことが関係していると考えられています。

・筋肉の疲労

日常生活の姿勢や動作などが原因で、腰まわりの筋肉には疲労が蓄積されていきます。
その疲労が許容範囲を超えたときに炎症が起こり、ぎっくり腰が起こると考えられています。
腰への小さな負荷でもぎっくり腰の引き金になります。
例えば、ベッドから起き上がる動作、くしゃみや咳、下に落ちた物を拾う動作などが挙げられます。

・身体のゆがみ

身体にゆがみがある状態が続くと、腰にかかる負担が大きくなります。
その負担が蓄積されていき、ささいな腰への負担でも炎症が起こりやすくなることがぎっくり腰につながります。

・腰への大きな負担

重い荷物を持ち上げる、急に後ろを振り返るなど、腰に大きな負担がかかることで腰まわりの組織が損傷してぎっくり腰を引き起こすことがあります。

ぎっくり腰の症状は、急性期から慢性期へと経過していきます。
それぞれの症状の特徴を知り、適切に対処することが大切です。

●急性期

患部に強い炎症が起こっている時期です。
発症直後から1か月近く続きます。
発症直後には動けないほどの痛みを覚えますが、徐々に痛みは緩和されていきます。

●慢性期

炎症が落ちつき、痛みも緩和されてくる時期です。
急性期は鋭い痛みですが、慢性期に入ると鈍い痛みが続きます。
徐々に動けるようになりますが、数週間～1か月以上は慢性期がつづくといわれています。

ぎっくり腰と類似した症状が現れる病気には、次のようなものが挙げられます。

●腰部脊柱管狭窄症

背中から腰を走る神経の通り道になっている脊柱管が狭まり、神経を圧迫する病気です。
安静にしているときには痛みを覚えにくいため、ぎっくり腰とは区別しやすいといえます。
ただし、動くと腰に痛みや下肢へのしびれが生じます。

●腰椎椎間板ヘルニア

腰の骨と骨の間にある椎間板の中から髄核が外に飛び出してしまい、神経を圧迫する病気です。
腰を反らす動作で痛みが悪化しやすいです。

●脊椎すべり症

脊椎にズレが生じてしまう病気で、特に成長期のお子さまに起こりやすいです。
腰に負担がかかる動作で痛みが悪化します。

●内臓疾患

内臓に病気があると、症状のひとつとして腰痛が生じることがあります。
内臓疾患の場合、腰痛以外にもさまざまな症状が現れます。

当院におけるぎっくり腰の施術は、次の通りです。

●鍼灸

ぎっくり腰の痛みが強い場合は、鍼灸で痛みの除去を行います。
ツボに刺激を与えることより、体内の気血が促され、症状の緩和や組織の回復が期待できます。

●ハイボルト

ハイボルトは炎症期でも施術できる電気療法です。
ハイボルトには炎症を抑制する作用があるため、痛みの除去が期待できます。

●EMS

痛みや動かしにくさが緩和されてきた時期からは、EMSで筋トレを行っていきます。
ぎっくり腰が起こる方は、筋力が低下していることが多いです。
再発予防のために、必要な筋力をEMSでトレーニングします。
痛みが起こりやすい動作で鍛えるべき筋肉が異なります。

●メディセル

ぎっくり腰の慢性期には、腰まわりの筋肉が拘縮しています。
メディセルで筋膜をはがしていき、固くなった筋肉の柔軟性を取り戻します。

ぎっくり腰は発症から早く対処するほど早期回復が期待できます。
施術期間と施術過程は、次のとおりです。

●急性期

発症直後から1か月ほどは急性期です。
炎症が起きているため、患部に直接アプローチするような施術は行いません。
炎症を除去して痛みを緩和するために、電気療法で炎症の抑制をはかります。

●慢性期

慢性期には痛みは緩和されていき、安静は逆効果になります。
患部の拘縮をメディセルで緩和し、可動域の改善をはかります。
また、再発予防のためにEMSで筋力を高めます。
EMSは寝たまま行える筋トレなので、運動が苦手な方でも手軽に筋力を高められます。

ぎっくり腰の症状を緩和するためには、症状の状態に応じて適切に対処する必要があります。

●急性期

・安静にする

急性期では患部が炎症しているため、動けば炎症が拡大する場合があります。
無理に動かさずに安静にしましょう。
痛みを感じない姿勢で休んでください。

・冷やすことは逆効果

ぎっくり腰の痛みは脳神経の誤作動によるものだと考えられています。
そのため、冷やすことは逆効果になります。

●慢性期

・温める

急性期に安静にしているため、筋肉が拘縮しています。
入浴などで温めて血流を促し、固くなった筋肉をほぐしましょう。

・動くようにする

慢性期には痛みが落ちつき、徐々に動けるようになります。
このときに動かずにいると再発や慢性腰痛を引き起こす原因になるため、無理のない範囲で動くようにしてください。

ぎっくり腰を発症・再発させないためにも日常から予防を心がけましょう。

●運動をする

筋力や柔軟性があると腰への負荷は軽減され、ぎっくり腰の予防につながります。
日頃から適度に運動することを心がけてください。

●休養をとる

休養は筋肉の疲労を回復します。
腰への負担が大きいスポーツや仕事をしている場合、疲労回復のために休養をとることも大切です。

●腰への負担に注意する

腰に大きな負担がかかることで、ぎっくり腰の発症リスクが高まります。
ものを持ち上げる際の動作や、咳・くしゃみの際には身体に大きな力がかかるので注意が必要です。
ものを持ち上げるときは膝をついて身体で持ち上げるようにし、咳・くしゃみの際には壁などに手をついて支えるようにしてください。

●腰の病気にも注意する

ぎっくり腰だけではなく、腰の病気にも注意しましょう。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアは、不良姿勢やスポーツなど腰への負荷によって生じます。
また、脊椎すべり症はスポーツをする成長期のお子さまに多いため、お子さまが痛みを訴えた場合はすぐに医療機関や整骨院へご相談ください。
また、腰痛だけではなく他の症状がある場合には内臓疾患の疑いもあるため、医療機関で早急に検査することをおすすめします。